
埼玉県行田市にある「古代蓮の里」を訪れた。蓮の花を前にすると、ふと思い出すのが「蓮の花は開くときに音がする」という言い伝えである。
俳人・正岡子規も『朝風にぱくりぱくりと蓮開く』と蓮の花が開く様子の俳句を残している。「蓮開く音」を表現した世界は、今も多くの人の想像力をかき立てられるものだ。静かな早朝の蓮池に立つと、「もしかしたら聞こえるかもしれない」そんな不思議な気持ちになる。
園内駐車場脇には『蓮の故郷』の歌碑がある。これはコーラスグループ、ダークダックスの「ゲタさん」こと喜早哲(きそう・てつ)さんが、平成12年の7月に行田の蓮のあまりの美しさに感動し、友人で作曲家の小林亜星氏に作詞作曲を依頼して出来た一曲だ。歌うはもちろんダークダックス。2番の歌詞には「蓮開く音」に思いを寄せた言葉が刻まれており、ぜひ、じっくりと聞いてほしい。多くの人が抱く、「蓮の花はどんな音を立てて開くのだろう」というロマンを感じさせてくれる。静かな朝の空気の中で、目には見えない「音」に耳を澄ませたくなるような気持ちになった。
2010年に東松山市長に就任した森田光一氏。2012年には東松山の花、牡丹と行田の古代蓮の交換をした。花が結ぶ交流で、自身の公約「東松山元気創造計画」に名実ともに花を咲かせた。森田氏はこの夏勇退となるが、行田の古代蓮は今年も美しい姿をみせている。
古代蓮の里では、美しく咲き誇る蓮の花を間近で楽しめる。蓮の花はまだあともう少し見頃が続く。蓮は早朝から午前中にかけて花が美しく開くため、8月上旬も午前中の来園がおすすめ。古代蓮(行田蓮)はもちろん、42種類・約12万株もの様々な品種の蓮が、時期に応じ池いっぱいに花咲く。この光景はこの季節ならではの美しさである。夏の朝、静かな蓮池を歩きながら、蓮の花が開く「音」に思いを巡らせるのも乙なものだ。美しい景色とともに、心穏やかな時間を過ごせるはずである。
尊敬する先輩が招かれた結婚式でよく引用していた、「わさびの花よりも蓮の花になって花嫁には生きていってほしい」。その言葉もリフレインした。