
秩父市吉田地区、兎田(うさぎだ)の地にある「兎田ワイナリー」を訪ねた。芽吹き始めたばかりの若い葡萄畑。代表の深田和彦さんご本人から熱意あふれるお話を丁寧にうかがえた。狭いワイナリーなので様々な工夫をしているとのことだ。
葡萄の木々は低めである。棚では作らない。低いほうが細やかな手入れもしやすく、房に栄養も集まりやすい。霜は天敵。雨の少ない土地柄であっても、根腐れを防ぎ、水が溜まらないよう管理されている。葡萄の木は10年から30年のものがよい。その年ごとに粒や味に微妙な変化があるのも、日々が新たであることの生きた証である。葡萄が小粒だと濃厚なワインが出来る。たとえば、糖度が上がりやすく、質のよいマスカットベリーの美味しさ、またその人気の秘密は何だろう。ヒントは寒暖差にある。秩父の寒暖差には糖度を高める効果があるのだ。
深田代表に促され周囲を見渡すと奥多摩湖から雲が流れてくるのが見えた。秩父盆地ならではの雄大な景色に胸が熱くなる。雲取山、両神山、城峯山。隣接する都府県の山並みが兎田の葡萄畑を見守っていることがよくわかった。
試飲では、ほとんどすべてのワインをいただいた。いずれも秩父生まれ、秩父育ち。一つ一つに明らかな個性が出ており、どれも魅力の宝庫である。同じ土地で生まれ造られていても、こんなにも表情が異なるとは、ワインの奥深さにはため息が出るばかりだ。
兎田自社畑ブドウの「秩父兎田ジュース」は夏にはかき氷のシロップにもおすすめ。移ろいゆく季節を兎田ワイナリーとともに。
葉桜こい
(画像は代表の深田和彦さん)