名旅館加賀屋に学ぶ 「おもてなし」 国際ロータリー都市連合会

国際ロータリー第2570地区(高柳育行ガバナー)第1グループ(鎌田政稔ガバナー補佐)の都市連合会は、このたび川越ラボアラクテで開催された。

この日の基調講演は、小田與之彦氏。(株式会社加賀屋代表取締役)。プロが選ぶ日本のホテル・旅館の100選」36年連続一位獲得。あのすべてが行き届いた名実ともにナンバーワン、世界からも注目される 石川県和倉温泉 あの加賀屋のオーナー小田氏だ。

小田氏講演要旨

一番大切なのは観光。行きやすい、交通アクセスが良い。行く必然性がある。来やすさと来る価値、この二つが揃うとお客様を呼び込める。また回遊時間を長くするということも大事。北陸新幹線開業から一周年。金沢は日本の伝統工芸がさかん。交通アクセスがよくなったから安泰とアグラをかいてはいけない。来る価値、そこにいく必然性。新幹線開業を大きな機会として、おもてなし、お迎えする体制を高めていく。より一層充実させることが新幹線効果を最大限引出し、維持することになると思う。

サービス。プロとして訓練された社員がお客様からお役に立って感激と満足感を引き出すこと。おもてなしでお客様に喜んでもらうこと、それはお客様にとって必要か、大切か。スタッフそれぞれのものさし、サービスに対する考え方 をそれぞれの持ち場で生かしていく。

お客様から宿泊代をいただいている。それに対してご満足をしていただく結果を約束すること。高校野球ではなくプロ野球のように結果を出す、お客様にご満足をしていただく結果を追求していく。結果にコミットしていくことこそプロとして大切。

よいサービスを提供する、ホスピタリテイと正確性。 タクシーもサービス業 正確性が大切。安全で正確な運転技術。急発進、急ブレーキで正確な時間に着いたとしてもお客様はどうか。お客様のことを考える運転技術。丁寧な受け答えをしているが正確な運転技術がないとどうなのか。お客さまを思う思いやり、ホスピタリテイがあってこそ、はじめて良いサービス、お客様に喜んでいただけるサービスが提供できる。

なぜ日本一といわれるか。もてなし、施設、料理 おもてなしが一番大切。日本一という評価に安心せず、一つ一つの課題に取り組み、お客様に喜んでいただけるように努力していき、さらに次なる目標を掲げている。

加賀市から能登に引っ越しをしたから「加賀屋」。だから、能登ではよそ者、新参者という立場でのスタートだった。より一層のサービス、お客様に喜んでいただけることを追求してきた結果が今とも思う。

あぐらをかかず 旅館はリラックスするところ。   創業以来の信条は「笑顔で気働き」。当たり前のことを当たり前に、それがサービスの原点。つねに笑顔で接する。

気働きとは?目の前のお客様の状況をよく観察してそのお客様の表情や動作の中から今、この時点でお客様がどんなことをお求めになられているか、的確に正確に判断をして、臨機応変に状況に応じてお客様のご要望に、最善で最適なサービスを提供しましょう。そういうサービスを提供できるように心を働かせましょう。それが気働き。

わかりやすい例、お客様がお水を欲する、喉がかわいていれば、冷たい氷水、薬を飲むのであれば常温の水、同じ水であっても状況に応じたサービスをする。マニュアル通りにはいかないものだ。しかし、これも言うのは簡単で、実行は難しい。

なぜ、おもてなしを追求するのか。70年近く前、当時大きな招待旅行を企画された。一つの旅館に収まりきれず、一部の人が「加賀屋」に泊まった。第一線の旅館にくらべてサービスが劣り、たくさんのお叱りをうけた。旅館というのは毎日が同じことの繰り返し。しかし、お客様は毎日変わる。この一期一会を大切にお客様の満足が自分たちの生命線であると考えていった。すべてのお客様の宴会場にあいさつにいく。お酌をする。そして、お客様のグラスが空になっていないか。お料理をおいしく召し上がっているか?箸は進んでいるか?お部屋の温度は寒すぎないか?細かいことをチェックし、最終的にお客様の笑顔、本当に喜んでいただいているかをチェックしていった。今では250室近い大きな旅館となってお客様に目が行き届いているかどうかが快適か?お客様との距離は?一つ一つに心があると思ってもらえるように日々努力している。

たとえば、新聞 地元紙に加えて、読売旅行の時には読売新聞。電機メーカーのお客様はテレビのメーカーに心くばり、など。マニュアルに作ることはできないサービスを駆使していく。またリーダーが部下を厳しすぎる言葉で注意すると真の笑顔が生まれない。社員同士のコミュニケーションも大切。客室係の配膳一つも、きちんと言葉を添えて、(素材についてなど)料理の味を引き出すサービスを行う。

加賀は伝統工芸がさかん。加賀百万石とはいえ、外様大名だった。軍備に力をいれると幕府に目をつけられるので輪島塗、加賀友禅、九谷焼、象嵌細工、水引、など京都に次ぐ、伝統工芸王国だ。館内に30分くらいツアーを組めるほどの伝統工芸品が陳列されている。雑誌るるぶは、「見る食べる遊ぶ」から「るるぶ」へ。今日の旅は、体験する、食べる、学ぶへと進化。何かを学ぼうという意識が強い。その館内ツアーは時代に合い、人気だ。事務経理などの社員総出でお客様の前に立つことに。そのことも社員のサービスに対する意識向上につながっている。

年間二万通 一日50通以上のアンケートをいただく。それを大事にその部署ごとに仕分けし、お客様の不満には直接おわびし、善処したことを報告している。クレーム一つでも「そのように対応しました」ではなく、「なぜそれが起きたのか?起因、原因を明確にし、再発させないために何が必要かを考え、各部署で対応していく。

「社員が安心して働ける環境」の仕組み。機械ができることは機械に。人にしかできないことは人に。また働く母のために30年前より託児所を完備。早朝より、深夜まで、子供を預かる、昼間は母子で過ごせる。いい人が仕事に定着、サービスの知識、経験をあげ、お客様によりよいサービスを提供できることを目的としている。

コンピューターへの大幅な投資をした。お客様が予約時点でどんなご要望をしているのか一か所で管理できるシステム。データをひきだし、お客様お迎えのための準備をする。お客様との双方向のやりとりからお客様の最新の情報を共有し、よりよりサービスをする。一番大切なのはお客様がリラックスし、明日からまたがんばろう!というふうに言っていただくこと、旅館に来ていただくことでより、人間関係を近づけていただく、だからこそ、料理もおいしく、施設も安全で清潔でなければならない。人生の節目で来館されることが多いので、非日常を演出し、人生の大切な日ということを考えサービスをしている。

小田氏は英語も達者。総合商社からハワイのシェラトンへ。グローバルな見方と極上のサービスが身についている。 新幹線開業によって大宮ー金沢間 二時間十分をきった。 おもてなしの極意は日々の積み重ね。会社のトップとして 社員へ愛あるトレーニングをしつつ、お客様へのサービス向上を常に頭に。小田氏から学ぶことは多い。

伊勢谷 珠子