芥川賞受賞の「死んでいない者」を読んだ。ミーハー的だが、芥川賞直木賞は必ず読むようにしている。作者の滝口悠生氏は入間市出身。受賞直後の記事には「埼玉県西部地区には馴染みの風景が」という言葉が踊っており、興味をひいた。
通夜の晩を舞台にまさに「死んでいない者」の物語だった。登場人物も親戚多数。メモ用紙も必要なくらいの展開で、丁寧な組み立ての作品であった。もちろん、舞台が東上線沿線の埼玉県西部。地元住民としては、あの場所かこの場所かと思いを巡らせるだけでも楽しむことができた。
滝口氏、そして、直木賞受賞荻原浩氏ともに第59回埼玉文化賞を受賞した。また今回の秋の褒章では伊集院静氏が紫綬褒章を受章。デビュー作から新刊を買い揃え、読破してきたファンとしては我が事のようにうれしい。
活字離れが進むという悲しい報道のあるなか、読書の良さを今一度確認したいものだ。「どんなに疲れていても1日5ページ、寝る前に本を読むようにしている」という人生の達人に会って、多忙を理由に本を開いていない自分を恥じた。読書量は蓄積の財産。付け焼き刃でふやすことはできないし、書物に馴染んでる人の奥行きはそうでない人と比べるとボキャブラリーの差に如実に現れる。
さあ、本を読もう。