川越まつりのない秋だから 「うつくしの街 川越」をよみたい

2019年6月に発行された「うつくしの街・川越 小江戸成長物語」(寺島悦恩・小林範子編集企画)。川越がたどってきた歴史や美術、観光が横断的につづられている。

松尾鉄城氏、谷澤勇氏、井上浩氏、梶川牧子氏、故可児一男氏、溝尾義隆氏、粂原恒久氏、山野清二郎氏、山田禎久氏、金剛清輝氏、原知之氏など錚々たるメンバーがデイープな川越を熱く執筆しているのだ。

小江戸川越は10月の川越まつりを境に冬支度がすすむ。今年は新型コロナ対策で川越まつりは中止。ひんやりした朝夕を迎えても、おまつり準備がないせいか、季節を感じることが難しい。

こんな時だからこそ、「うつくしの街川越」は価値ある一冊かもしれない。

「うつくしの街 川越」はまだ購入可能だ。

 




可児さんの遺志は平成から次に時代へ。都市景観シンポジウムでも話題に。

第15回かわごえ都市景観表彰・都市景観シンポジウムは9日13時半よりウエスタ川越で開催された。かわごえ都市景観表彰は平成2年より隔年で実施され、今年で15回目となった。まさに平成を代表する川越の事業の一つである。

空間を構成するすべてにバランスがとれ新しい試みや工夫が盛り込まれ景観づくりに対する模範のなるものに与えられるものが「都市景観デザイン賞」となる。表彰されたものは「旧大工町長屋」(長年空き家になっていた店舗に息吹を与え、交差点の風景を一変させた 連雀町27-1)「稲葉屋本舗+吉仁製菓」(平成27年菓子屋横丁全焼火災 6棟のうち3棟を二店舗に再建。町並みのにぎわいと看板ベンチ、人を招き入れるしつらえ。火災復興のシンボル 元町2-7-6)「龜屋栄泉南亀楼」(脇役になりがちな路地の魅力をひきだした演出 幸町5-30)「氷川神社旭舎文庫」(地域のこどもたちに親しまれていた駄菓子屋を地域に開かれた読書館へ 真面目に修理修復した関係者の想いの結晶 志多町1-1)「小島家店蔵」(空き店舗の店蔵を保存再生 復原 分断されていた町並みの連続性と通りの歴史性も再生 連雀町13-4)の5点。「この場所にあるから意味がある」といった作品群であった。

表彰式のあとは東京藝術大学准教授藤村龍至先生による「まちと社会を設計する」をテーマに講演だった。鶴ヶ島中央交流センター、大宮東口プロジェクト(大宮駅グランドステーション構想)など住民と建築家と行政の三位一体の必要性が語られた。

また閉会の挨拶で、二瓶川越市都市計画部長は、蔵造りの町並み再興に奔走した 初代蔵の会会長可児一男氏が逝去したことにふれ、「可児さんのご遺志をつないでいくことも私たちの責任」と述べた。二瓶都市計画部長のお役所言葉の羅列ではない挨拶は可児さんの偉業をしのばせた。

川越藩主松平周防守康英は福島県棚倉から家来とともにやってきた。その棚倉出身の武士の末裔はいまだなお川越に住み各分野で活躍をしている。可児氏はその一人。可児氏は蔵造りの町並みを再興させるだけではなく、一番街周辺が国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されたあとも「川越町並み委員会委員長」として見事な調整役を果たした。油彩画の創作にも意欲的で上野の森美術館「日本の自然を描く」で優秀賞を受賞した可児さん。温厚・柔和な瞳の輝きは忘れられない。