「粋」とは?榮太郎總本舗・細田安兵衞氏講演 小江戸サミット川越大会

第20回小江戸サミット川越大会。川越、栃木、香取(佐原)の三市が小江戸とよばれ、この三市の市長、商工会議所会頭、市民の交流の一日が小江戸サミット。小江戸の定義は「蔵が残っている、江戸文化の風情がしのばれる、蔵を活用した商業、舟運が発達していたこと」など。

平成8年からスタートしたこの小江戸サミット。今年は20回の記念大会となった。この日の記念講演は「日本橋のまちづくりと江戸の粋」について。講師は榮太郎總本舗相談役ならびに名橋「日本橋」保存会副会長の細田安兵衞氏。川越亀屋さんとの縁などもまじえながら、粋人による「粋」の真髄を語った。

講演要旨

「粋」とは江戸の生活様式の代表的表現。一言で言いあらわすことは難しい。「粋」を上方・関西ではすい、関東ではいきと読む。粋人を関東では通人といい、「風雅を楽しみ、博学で伝統、芸能文化、花街・はなまちを愛する知識人。」粋とはいきざまでもある。さらに粋を英語であらわすと、「ストイック、スマート、ダンデイ、ノーブル」。京都では「雅、幽玄、わびさび」江戸言葉では「いなせ、洒落」など。

粋な人をあげると「身なりがこざっぱりして、垢抜けている。洗練された空気がにじみでている。財力を誇示しない。自己顕示欲をみせない。謙虚で一歩控える。見えないところにお金をかける・裏まさり」これらが粋な人の心意気でもある。

世阿弥の「風姿花伝」の「秘すれば花」が粋の真髄かもしれない。粋な人は「金銭に無頓着。いくら使ったかも言わない。」逆に粋にはお金もかかる。また粋な人は昔のことにいつまでも執着しない。粋な人を見抜く力も必要。

男女間について。心中・死をもって愛の結末をつけることは上方の文化。江戸は精神的に誓いあい、守り通すことが愛。江戸文化の華・吉原の世界では初めて会い、二度目でやっと口をきいて(裏を返す)、三度目で馴染みとなる。この世界でもガツガツすることは粋ではなかった。

着物は縞が粋。特に縦縞は人間の精神を引き締める作用もある。色も単色、茶、青、紺、藍、ねずみ(灰色とはいわない、江戸は灰は火事を連想させて忌言葉だった)。 粋ではないことを愚粋、野暮という。  (2016・1・30・細田安兵衞氏)

粋な生き方をするには一朝一夕にはいかないのだ。粋な先輩の後ろ姿を見て時間をかけて学ぶ。何をするにも付け焼刃はもろく、メッキははげる。また、我こそはという「我」がある以上、自分こそ知っているという「錯覚」がある以上粋な人にはなれない。細田氏の講演は奥深いものだった。 伊勢谷珠子