可児さんの遺志は平成から次に時代へ。都市景観シンポジウムでも話題に。

第15回かわごえ都市景観表彰・都市景観シンポジウムは9日13時半よりウエスタ川越で開催された。かわごえ都市景観表彰は平成2年より隔年で実施され、今年で15回目となった。まさに平成を代表する川越の事業の一つである。

空間を構成するすべてにバランスがとれ新しい試みや工夫が盛り込まれ景観づくりに対する模範のなるものに与えられるものが「都市景観デザイン賞」となる。表彰されたものは「旧大工町長屋」(長年空き家になっていた店舗に息吹を与え、交差点の風景を一変させた 連雀町27-1)「稲葉屋本舗+吉仁製菓」(平成27年菓子屋横丁全焼火災 6棟のうち3棟を二店舗に再建。町並みのにぎわいと看板ベンチ、人を招き入れるしつらえ。火災復興のシンボル 元町2-7-6)「龜屋栄泉南亀楼」(脇役になりがちな路地の魅力をひきだした演出 幸町5-30)「氷川神社旭舎文庫」(地域のこどもたちに親しまれていた駄菓子屋を地域に開かれた読書館へ 真面目に修理修復した関係者の想いの結晶 志多町1-1)「小島家店蔵」(空き店舗の店蔵を保存再生 復原 分断されていた町並みの連続性と通りの歴史性も再生 連雀町13-4)の5点。「この場所にあるから意味がある」といった作品群であった。

表彰式のあとは東京藝術大学准教授藤村龍至先生による「まちと社会を設計する」をテーマに講演だった。鶴ヶ島中央交流センター、大宮東口プロジェクト(大宮駅グランドステーション構想)など住民と建築家と行政の三位一体の必要性が語られた。

また閉会の挨拶で、二瓶川越市都市計画部長は、蔵造りの町並み再興に奔走した 初代蔵の会会長可児一男氏が逝去したことにふれ、「可児さんのご遺志をつないでいくことも私たちの責任」と述べた。二瓶都市計画部長のお役所言葉の羅列ではない挨拶は可児さんの偉業をしのばせた。

川越藩主松平周防守康英は福島県棚倉から家来とともにやってきた。その棚倉出身の武士の末裔はいまだなお川越に住み各分野で活躍をしている。可児氏はその一人。可児氏は蔵造りの町並みを再興させるだけではなく、一番街周辺が国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されたあとも「川越町並み委員会委員長」として見事な調整役を果たした。油彩画の創作にも意欲的で上野の森美術館「日本の自然を描く」で優秀賞を受賞した可児さん。温厚・柔和な瞳の輝きは忘れられない。

 

 

 




菓子屋横丁に磨きと輝きを 都市景観表彰 宮澤孝久さん

「菓子屋横丁防犯灯」。川越菓子屋横丁会。

横丁の絆を防犯灯で。安全性だけに着目しないところが宮澤さんのおしゃれな感性。それぞれの店先にデザイン性を持たせ、一つ一つのデザインが、灯りを通して一体感を生み出している。周辺のたたずまいを壊さずに、さらに新しい夜間景観を創り出した宮澤マジック。

「冬場、いまの時期、16時過ぎると日が暮れ、住んでいる人が少ない地域はなおさら暗闇を感じちゃいますよね。まして、昼間の人の往来、にぎやかさとの対極で、よけいに寂しい風景になっているとも思います。川越っ子として、そのアンバランスをどうするか、と常に頭をかすめていたところこのお話をいただきました。玄関灯は防犯対策の意味合いも兼ねてますがLEDを使用しながらもまちの風情に合わせたデザイン優先にしました。ポールをたてれば済む話も、もっと工夫を凝らしたい、そこでいきついたのが既製品を使って経費は抑え目に、クオリテイは高く、耐久性のあるもの、行燈型の玄関灯。小さいころ街角にあった医院の灯り。白い行燈にペンキで書かれた文字。そのイメージでレトロ感を出しました。20軒くらいの店先でこの玄関灯が昼間の喧騒とは違った菓子屋横丁を創り出し、子どもたちの声ではなく、大人の男女がゆっくりと散策する川越菓子屋横丁のもう一つの顔となればうれしい」と宮澤さん。

川越に新たな空間を生み出す宮澤さんはまさに「川越ライトアップ」の旗手だ。

 




都市景観シンポジウムとデザイン賞ポイント賞表彰 

かわごえ都市景観表彰は平成2年から隔年にわたって行われて今年で14回目。

専門家に加えて、市民もまちかど審査員になって投票、都市景観デザイン賞、3点、都市景観ポイント賞3点が表彰された。

川越市の都市景観は、無電柱化された蔵造りのまちなみから、平成元年都市景観条例が制定され市民とともに形成されてきた。平成11年に伝統建造物群保存地区の決定、平成23年川越市歴史的風致維持向上計画の策定など、市と市民の協働、市民生活の中に文化を支える力が醸成され全国から注目されてきた。

このたびの表彰も歴史がいきづくまちなみの中に調和し、新しい文化を創る作品が表彰となった。

都市景観デザイン賞 「鍛冶屋横丁再生の連鎖・金大幸町店舗住宅 幸町1-5」

「風鈴の音と共に溶け込む・氷川神社参集殿及びバス停 宮下町1-8-9」

「伝統への提案・宮下町の町家 宮下町2-2-16」

都市景観ポイント賞 「街道景観を健やかに牽引・くるみ歯科・小児歯科 中福394-1」

「記憶をつなぐ絶妙なちょい足し・連雀町炭火やきとりもとはし本店 連雀町7-2」

「深まる絆ここに・菓子屋横丁防犯灯 元町二丁目」

このあと「川越の景観を考える~これまでとこれから、そして川越百景~」と題しパネルデイスカッションが行われた。スピーカーは可児一男さん(川越街並み委員会委員長)加藤忠正さん(小江戸川越観光協会専務理事)倉田直道さん(工学院大学名誉教授)岩堀みどりさん(都市景観表彰審査部会委員)。それぞれの立場で景観への取り組みの実践と今後の提言をされた。

川越百景は コースごとにまとめられており、市民としては一家に一冊は保存したいもの。ウオーキングブームが日本中に巻き起こっている今、ウオークコースは必見だ。詳しくは川越市都市景観課まで。電話049-224-5961