ラスター彩に会いに 幸兵衛窯(岐阜多治見)

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縁あって、美濃焼幸兵衛窯のマグカップを長年愛用してきた。幸兵衛窯の七夕の宴があるというので岐阜多治見まで足を延ばした。

宴の前の鼎談では七代目幸兵衛さんがコーデイネーターを務め、イランからラスター彩を学びに来ている大学教授二名がフランクなお話を聞くことができた。二人はテヘラン美術大学教授 ベサッドアジュダリ氏、カシャーン大学教授 アッバスアクバリ氏。お二人とも敬虔なイスラム教徒で、食べ物に大変気をつかう話なども披露された。、幸兵衛さんの父、人間国宝加藤卓男さんが昭和50年代に復元されるまで技法が途絶えた幻の名陶「ラスター彩」。ラスターとは光沢やきらめきの意。気品あふれるその陶器は9世紀のメソポタミア発祥といわれ、王族が貴金属に代わるものとして美しい光沢を重んじた。西アジアからエジプトへ、そしてペルシアへ。制作の中心地は変遷しつつもラスター彩は色褪せることなく、絢爛たる貴族的な焼き物「ペルシアの華」と隆盛を極める。しかし、モンゴル侵攻の13世紀中ごろから衰微、18世紀にはその歴史の終焉となってしまう。鼎談の中でも、イランでの「ラスター彩復元の加藤卓男」の名声は高いとあった。

メソポタミア文明からの時代の流れ、また遠くペルシアからの距離を経て加藤卓男氏によって復元された「ラスター彩」。今は当主加藤幸兵衛さん、その子亮太郎さんによって受け継がれていくことは、アジアは一つ、世界は一つという感がある。

また、幸兵衛さんが生み出す深いブルー。「幸兵衛ブルー」と勝手に名付けてしまったが、なんとも味わい深い。その「ラスター彩」「幸兵衛ブルー」が川越にやってくる。9月2日から5日まで、川越丸広で展示、頒布会をされるという。残暑の残照の中の幸兵衛文化楽しみだ。