福登美オーナー 坂口孝さん 軽妙洒脱に和食を語る 男のゆうゆう塾で

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名細公民館で開催されている「男のゆうゆう塾」。毎回川越市内のその道のプロを講師に招いて講座を開いている。このほど本川越駅近く割烹「福登美」代表取締役 坂口孝さんを講師に招いた。坂口さんは市内各所で「立て板に水」のごとく、司会進行をされ、そのテクニックは一流アナウンサーをしのぐほど。当日も難しい和食の世界を楽しくわかりやすく講演した。

坂口さん講演要旨

福登美は自分で三代目。割烹「福登美」経営の他介護施設4施設1病院に食事を提供している。病院食はまずいというイメージを払しょく。介護施設オーナー夫妻が「おいしいものを食べて長生きしてほしい」という考えに賛同して始めた。日本料理という言葉は明治維新後から。おそらく維新後にはいってきた西洋料理、中華料理に相反して生まれたものであろう。調理場のしきたりについて。親方、立板、向板、煮方、焼き場、あぶら場、八寸場、そのしたにあひるとよばれる丁稚という階級。あひるはげたもサンダルもはけず裸足でぺたぺた歩くので名付けられた。煮方から職人、焼き方から下は修行の身。川越の料理屋では「源氏家」の板場も板張りだった。また源氏家の先代は昭和天皇川越行幸の際に、献立をたてたまさに料理人の鑑。私も彦根に修行にいったが、丁稚時代教えていただくので給与をもらうというより月謝を払いたいというものだった。親方は絶対的存在だった。料理人は「バカじゃできない、利口じゃできない、中途半端ではなおできない」というもの。味の東西、関西関東違いがある。うなぎは背開きと腹開き。武士社会の関東は切腹を連想するので背開き、関西は商人文化で腹びらき。その他関東の玉子焼き、関西のだし巻き玉子、関東の江戸前寿司関西の箱ずし。一汁三菜の菜は食事のおかず。会席の強肴はメイン料理の意味。和食の五法(生で、煮る、蒸す、焼く、揚げる、)五味(苦み、甘み、酸味、塩辛い、辛み)五色(白、黒、赤、黄、青か緑)五感、これらはまさにおもてなし。日本料理は「割主烹従・かっしゅぼうじゅう」。割は割る、切るということが主で煮る、蒸す、焼く、などはそれに従うもの。三種盛、五種盛と奇数を使うのは中国発祥、奇数は吉数につながることから。一流店の一見さんお断りということはえらぶっているのではなく、その人のお酒の好みや食材の好き嫌いを知っていないとおいしいものが提供できないから。そういう意味がある。しかし、世の中で一番の調理人、一流の料理人が負けてしまうのは、「その方のお母さん」。お母さんに勝る料理をつくることはできないものだ。