快挙 川越高校出身 梶田氏にノーベル賞(埼玉初)

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ノーベル賞と地方の力

「ニュートリノ」研究者 東京大学宇宙線研究所所長 梶田隆章氏がノーベル物理学賞に輝いた。前日のノーベル医学生理学賞受賞の大村智北里大学特別栄誉教授に続いてのビックニュースに日本中が湧いている。

梶田先生は、東松山市高坂出身で農家の長男。大村先生も山梨県韮崎市出身でやはり農家の出身。大村先生のお身内が「勉強する暇があったら畑で手伝え」と親から言われていたと当時を振り返っていた。「勉強はいいからたんぼを、畑を手伝え」と言うことは生産農家としては日常なのであろう。大村先生は当然のことながら高校を出たら農業を継ぐつもりだったらしいが両親の進言から山梨大学に進学する。結果今日の偉大なる大村先生が存在するのだ。梶田先生も農家出身。近隣では「高坂に神童がいる」といわれた梶田少年。「やっぱり偉業を成し遂げた」と当時から梶田少年を知る坂戸の同世代の男性も大きな拍手を送る。川越高校29回卒業 同期には明治安田生命・根岸秋男社長もいる。川越高校は文部科学省SSH(スーパーサイエンスハイスクール・政府理科振興事業)に指定され、梶田先生はその運営指導委員もされており、今後の川越高校の理科学分野の更なる飛躍も期待される。梶田先生は川越高校から埼玉大学に進む。

ここで着目したいのが「山梨大学」「埼玉大学」という地方大学の力だ。「ノーベル賞」と聞けば東京大学、京都大学出身者ではないかと思ってしまうのはうがった見方であり、「地方の力健在!」とあらためてお二人の快挙を通じて今回感じているのである。

ノーベル賞と埼玉

お二人と埼玉の縁もチェック。大村先生。北本といえば「北里メデイカル」という代名詞である「北里大学メデイカルセンター病院」誘致に北里研究所のトップとして尽力された。さらに進学校で知られるさいたま市岩槻区の開智学園・開智・中学高校の名誉学園長をつとめている。一方、梶田先生。東松山市出身、地元市内の小学校、中学校から川越高校、埼玉大学へ。埼玉大学でしりあった奥様美智子さんは県立春日部女子高校出身。愛を育み、挙式した場所は「川越氷川神社」。現在は研究のため富山で暮らしているが自宅は越谷。本当に埼玉とゆかりのある大村先生、梶田先生なのだ。

みんなのために

大村先生はアフリカの風土病を予防、そして撲滅へと研究つづけた。母親から「みんなのためになるか」を考えるよういつも言われていたそうだ。梶田先生の研究分野は「ニュートリノ」(人類の知の地平線を拡大する純科学)。梶田先生自ら「今すぐに結果のでるものではない」と謙遜されているが、宇宙の構造、成りたちを研究することは、未来にむけて、人類「みんなのため」には必須研究項目である。拝金主義がもてはやされ、自己中心にものごとを考える人が多い中、大村先生、梶田先生の生きざまは「偉大なる研究」と大きな教訓を与えてくれている。

伊勢谷珠子