パワフルにいよいよ華やぐ 永倉啓子さん(小仙波)

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本のタイトルは「開業医の奥様」。これは2012年に出版され、2015年10月に「続・開業医の奥様」が刊行。軽快な文章がページをどんどん進ませる。肩に力がはいるわけでもなく、日常の奥様の様子。おもわず口元がゆるむ表現。難しい言葉ではなく、身近な言葉で。なんでも、かんでも消化もできないのに聞きかじりの語彙の羅列をすることを美とするにわか物書きが存在する中で、この奥様の賢夫人ぶりが文章の行間からも読み取れる。

このエッセイを上梓したのは、永倉啓子さん(小仙波)。開業医夫人として夫を支えて40年。患者さんとのやりとり、心温まるエピソードを書きとめ、2012年に「開業医の奥様」を著した。その視線は患者様へのやさしさで満ち溢れ、「本」は知り合いだけに配れればという域を超えた。

開業医の待合室は「地域医療の原点」であり、急速に進む超高齢化社会のなかでは、高齢者の方たちの「サロン」的要素を含んでいる。そんな中、「奥様・啓子様」の果たす役割は大きく、エピソードもふくらみ、続編を出版されることを決意。「患者様からの応援あってこそなんです」と永倉さん。

ページをめくると「ゴルフラブ」のエピソードがちらほら。ホールインワンを二回達成というから腕前も相当なものだ。「体が弱いところがあって、健康増進のために何かスポーツをと考え、ゴルフを勧めました。しかし、健康増進以上にはまりましたね」と懐深く奥様をみつめるのはご主人・永倉幸平先生。啓子奥様も「ゴルフなしに私の人生は考えられない。あっ!もちろん主人の存在はそれ以上に大きいものよ」と。気さくで朗らか奥様は今でも週に一回はゴルフコースにでる。

「川越」を愛する気持ちがみちあふれていることもこの本の魅力の一つ。「島根から川越に嫁いできました。島根は自然が美しく、海の食べ物もおいしいところ。川越は重厚な文化が息づく素敵な町。川越で生まれ育っていないからこそ、川越のよさがわかるのかもしれません。主人は開業医でありしかも親からの病院を受け継いだわけではありません。だから一生懸命二人で力をあわせてきました。」と美しく微笑む奥様。

ゴルフにダイビング(世界の海を潜った)に、日常の開業医の奥様業だけではなく人生を謳歌する奥様。「いよいよ華やぐいのち」は地域医療の花だ。

「開業医の奥様」「続・開業医の奥様」はネットアマゾンで購入可能。

伊勢谷 珠子

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