心美しき人

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埼京線での出来事。熱がこもった空気の電車内はふつうの神経でもイライラする。

午後の日差しの中ピンクの花柄キャミソールのタンクトップに超ショートパンツ、つま先と指先にはカラフルなネイル、ビーチサンダル、金髪に近い明るいヘアカラー、手にはスマホ、その画面に見入っている20歳代の女性。イマドキの子。祖母が生きていたらどんなにダメ出しをしたろう・・という子。

駅に近づき電車のドアが開き、熱風が入る。「暑さが亜熱帯に近いな。」と呆然としていたところ視界に花が揺れる。その彼女が席を立ち、白い杖をついた女性の手を引き、やさしく座席に誘導をして座らせたのだ。鮮やかでスピーディーな動き。おそらく座席に座っていた人全員がその動きに釘付けとなり、そして自分のふがいなさに反省したと思う。

服装は派手でもきちんとした育てられた方をしてきた子。心美しき人に日本人のやさしさを感じた。ホームを降りたら秋風が舞い、さっきの暑さへのイライラはなくなっていた。